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OPTIJul 9, 2025 5:55:29 PM< 1 min read

トランプ関税がもたらす越境ECへの影響と新たな市場展開の可能性

トランプ関税がもたらす越境ECへの影響と新たな市場展開の可能性
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2025年7月7日、アメリカのトランプ大統領が石破総理大臣宛に送付した書簡において、日本から米国への輸入品に対し25%の関税を課す方針が正式に通知されました(出典:BBC News、2025年7月8日)。この関税は2025年8月1日から適用されるとされ、日本の輸出業界、特に越境ECを営む事業者にとって大きな負担となる可能性があります。

この書簡では、米国の長年にわたる貿易赤字を是正する必要性が繰り返し強調されており、アメリカ国内で生産を行えば関税が免除される一方、日本が報復措置を講じた場合には、さらに高い関税が上乗せされる恐れがあるとされています(出典:CNN Business、2025年7月7日)。

越境ECへの影響

特に米国向けに販売を行っている日本や中国のECセラーは、すでに物流コストや現地通貨決済など多くのコストを抱えています。ここに25%の関税が新たに課税されることで、販売価格や利益率に深刻な影響を及ぼす可能性が高いです。

例えば、CIF価格が80米ドルの商品では、今回の関税で約20米ドルの追加負担が生じる見込みです。もし小売価格が120米ドル程度であった場合、最終的な販売価格は140〜155米ドルに達する可能性があります(出典:Deloitte Insights、US Economic Outlook、2025年7月号)。PwCの調査(Worldwide Tax Summary、2025年4月号)によれば、過去の関税引き上げ局面では、小売価格が約20〜30%上昇した事例も報告されています。

年商1億円のセラーの収益シミュレーション

ここで、北米向けに年商1億円(約65万米ドル)を売り上げている日本の越境ECセラーを想定した場合の影響を試算します。

  • 年間販売数量:5,416個(平均単価120米ドル)

  • 現行粗利率:40%

    • 粗利:1億円×40%=4,000万円

今回の関税で原価が平均20米ドル増加すると仮定した場合、1個あたり約3,000円の負担増となります。

  • 年間の追加関税負担:5,416個×3,000円=約1,620万円

  • 新しい粗利:4,000万円−1,620万円=2,380万円

  • 粗利率:約24%(▲16ポイント)

仮に消費者に価格転嫁できずにこの負担を吸収する場合、粗利益が約40%減少する計算となり、キャッシュフローや販管費負担に大きな影響を及ぼすと考えられます。

もちろん、商品カテゴリーや物流体制によって負担は前後しますが、類似規模の事業者の多くが収益性の急低下に直面する可能性があります。

中長期的なリスク

さらに、今回の措置は一時的な政策ではなく、トランプ大統領の再選公約にも含まれていた強い保護主義の一環とみられています(出典:日本経済新聞、2025年7月8日)。そのため、関税が恒久化する、あるいは対象が拡大するリスクも否定できません。

オーストラリア・カナダ・英国市場の可能性

こうした米国市場への依存度の高さは、事業の安定性にとって潜在的なリスクとなります。一方、オーストラリア、カナダ、英国は比較的安定した関税制度を有し、EC市場の成長率も堅調です。

  • オーストラリア:年間成長率約12%(出典:Statista、2025年版)

  • カナダ:約10%

  • 英国:約8%

また、オーストラリアのGST(10%)やカナダのGST/HST、英国のVATといった制度は既に確立されており、予見可能性が比較的高いと考えられています。もちろん英国ではBrexit後のVAT登録が必要になるなど一定の負担がありますが、唐突な関税引き上げが発生しにくい点は安心材料と言えそうです。

具体的な対応策

米国市場での売上を維持するだけでなく、成長市場への展開を検討することは、リスク分散の観点から有効だと思われます。

  1. 価格戦略
    新たな関税負担をどこまで販売価格に転嫁するかを見直し、最終的な粗利率の維持を試算する必要があります。

  2. 物流体制
    米国以外の現地倉庫や3PLを活用し、配送リードタイムとコストの最適化を進めることが重要です。

  3. 多市場展開
    オーストラリア、カナダ、英国など複数の市場で販売チャネルを構築することで、特定国の政策リスクを軽減できます。

  4. 商標・税務整備
    新市場での販売ではVAT/GST番号の取得や商標登録の整備が必要です。

オプティの支援内容

私たちオプティでは、こうした市場変化に対応する越境ECセラーの皆さまを支援しております。オーストラリア、カナダ、英国など新たな市場への進出にあたって、税務登録、輸出入手続、商標登録、現地販売体制の立ち上げまで一貫してサポートしています。

特に税務・物流の専門家が在籍しており、制度変更に伴うリスクを最小化しながら多角的な戦略を共に設計していくことが私たちの使命です。ご興味のある方は、ぜひお気軽にご相談ください。

また、中小企業向けには下記の販売サイトもご確認ください。

出典・参考資料

  • BBC News(2025年7月8日)「トランプ大統領、対日関税25%を発表」

  • CNN Business(2025年7月7日)「US-Japan trade tensions escalate」

  • PwC「Worldwide Tax Summary 2025年4月号」

  • Deloitte Insights「US Economic Outlook 2025年7月号」

  • 日本経済新聞(2025年7月8日)

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OPTI

オプティ株式会社は世界150カ国でのアドバイザリー、90カ国での税申告を実施する間接税の専門ファームです。国内外の数多くのナショナルクライアントを支援しています。

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