Shopifyでの課税義務販売ガイド(サウジアラビア)
本ガイドでは、ZATCA(サウジ税関当局)の考え方、JETRO公開情報や実務知見を踏まえ、Why/What/Howの順で手順化。Shopify Marketsや税計算の考え方も具体的に解説します。
Shopifyでの課税義務販売ガイド(サウジアラビア)
サウジアラビアへ日本から商品を発送して販売したい——そう考える越境EC事業者にとって、最初の壁は現地の間接税(VAT)の取り扱いと通関・関税です。本記事は、今般、Shopifyで日本から海外に物品をECにて販売する越境ECセラーに対して、現地の間接税の取扱(課税義務や課税義務となる閾値)を詳細に説明してください。また越境ECの際に購入者(バイヤー)に対して伝えるべきメッセージや留意点があれば説明してください。というニーズに応えるため、サウジアラビアの最新VAT実務を起点に、Shopifyでの設定、配送インコタームズ(DAP/DDP)の選択、チェックアウト文面例、規制・表示義務まで「これだけ読めば運用できる」レベルでまとめました。サウジアラビアの標準VAT税率は15%であり、輸入時には関税と共に課税されます。非居住者セラーの登録要否、居住者向けの登録閾値(しきい値)、Marketplace活用の可否など、判断を誤ると罰則や通関差止めのリスクになり得ます。さらに、サウジの通関では受取人の国民ID(Iqama/CR番号)やNational Addressが求められるなど、バイヤーへの案内も成功のカギ。本ガイドでは、ZATCA(サウジ税関当局)の考え方、JETRO公開情報や実務知見を踏まえ、Why/What/Howの順で手順化。Shopify Marketsや税計算の考え方も具体的に解説します。
越境ECで課税が発生する具体ポイント(輸入VAT・関税・インコタームズ)
Shopify設定:税・関税表示、HSコード、原産国、Markets活用
規制・禁止品・表示義務(SFDA、ハラール、アラビア語表示 等)
シナリオ別の対応表(DAP/DDP/KSA登録/Marketplace)
よくある質問(FAQ):返品・少額輸入・電子請求書・B2B他
サウジアラビアVATの全体像と登録閾値(非居住者・居住者)
サウジアラビアでは2018年にVAT(付加価値税)が導入され、現在の標準税率は15%です。主管庁はZATCA(Zakat, Tax and Customs Authority)。VATは国内譲渡・役務の提供、ならびに輸入時に課されます。越境ECで日本からKSA(サウジアラビア王国)へ物品を販売する場合、メインの課税ポイントは「輸入時(ボーダー)」と「国内供給(DDP等で輸入者が売り手になるケース)」のいずれかに生じます。
登録義務(閾値)と非居住者の基本ルール
居住事業者(KSA内に所在):年間課税売上がSAR 375,000(約1000万円強)超でVAT登録義務。任意登録はSAR 187,500超から可能。
非居住事業者(日本法人などKSAに恒久的拠点なし):実質的に閾値ゼロ。KSA国内で課税取引を行う場合は、原則として最初の取引からVAT登録が必要(買い手の逆課税で処理されるサービス供給など例外もあるが、物品販売では通常輸入VATが主)。
標準税率:15%(参考:PayPro GlobalのサウジVAT解説)。
定義:非居住者がKSAで課税供給を行う=登録要件が直ちに生じ得ます。物品の「輸入」か「国内供給」かを切り分け、誰が輸入者(Importer of Record)かで納税主体が変わります。
Marketplaceや他スキームとの関係
Marketplace(越境ECモール):国によっては「ファシリテーター課税(代理徴収)」があるが、KSAでのモール利用は各サービスの税ルール次第。モール側が輸入・徴収を代行する設計なら、セラーのKSA側登録・申告が不要な場合もあります。
自社EC(Shopify):誰が輸入者になるか(DAP/DAP vs DDP)で、セラーのKSAでの税務負担・登録要否が大きく異なります。
越境ECで課税が発生する具体ポイント(輸入VAT・関税・インコタームズ)
日本からKSAに物品を発送する際、課税の中心は輸入時のVAT(15%)と関税です。関税率はHSコードによって異なり、国内産業保護の観点から10〜25%程度の高関税がかかる品目もあります(JETRO:関税制度)。
インコタームズの選択で何が変わるか(DAP/DPU vs DDP)
DAP/DPU(=DDU):輸入者はバイヤー。KSA入国時にバイヤーが輸入VAT(15%)と関税を支払います。セラーはKSA VATの登録・申告は不要であるケースが一般的。ただし受取拒否や通関遅延のリスクが上がるため、チェックアウトでの周知が必須。
DDP:輸入者はセラー。セラーが輸入VATと関税を立替・納付し、バイヤーに到着時の追加徴収を発生させません。顧客体験は高い一方、現地での登録や通関体制、Importer of Record(IOR)スキームが必要になり、KSAでのVAT登録義務が発生し得ます。
よくある取引像と課税の生じ方
ケースA:自社EC + DAP(多くの越境ECが採用)
輸入VAT・関税はバイヤー負担。セラーのKSA側VAT申告は通常不要。通関時の請求・本人確認(ID/CR番号)がスムーズにいくよう、事前に案内が必要。
ケースB:自社EC + DDP
輸入VAT・関税はセラー負担。KSAでの取り扱いが国内供給に近づくため、VAT登録・、請求書要件、記帳・申告など一段高いコンプライアンスが想定されます。
ケースC:Marketplaceが税・通関を代行
プラットフォームが輸入者・徴収者として振る舞う設計なら、セラー側の負担は軽減。ただし手数料や値付けの自由度低下が課題。
ポイント:誰が輸入者(Importer of Record)かで税務・実務負担が激変。DDPを選ぶ場合は、現地通関の実務(IORの確保、税関手続き、関税立替)まで設計しましょう。
Shopify設定:税・関税表示、HSコード、原産国、Markets活用
Shopifyでは、国別税率の表示・除外、関税・輸入税の表示、HSコードや原産国の埋め込みなど、越境ECに必要な設定を一元管理できます。
税の基本設定(日本消費税の除外と海外向け価格)
日本消費税の輸出免税:越境EC(海外居住者向け発送)は日本の消費税は不課税(輸出免税)。Shopifyの「税金」設定で国外顧客には税抜表示になるよう調整(参考:ShopiFinderの解説)。
「お客様の国に基づいて税金を含める/除外する」を活用すると、国内=税込、海外=税抜の表示切替が容易。
関税・輸入税の表示とDDP対応
Shopify Marketsを使えば国・地域ごとに価格・言語・通貨・配送・税設定を集約管理(参考:Shopify Marketsの使い方)。
一部プランや外部アプリを通じて関税・輸入税の事前表示が可能。DDPでのチェックアウト徵収には対応範囲の事前確認が必須(国や物流連携によって可否が異なる)。
DDP運用では、通関委託先(クーリエ/フォワーダー)とIORスキームを取り決めて、税金の立替・精算・書類管理フローを確立。
商品データ(関税計算に必須)
HSコード(6桁以上)と原産国(Country of Origin)を商品ごとに登録。関税額・禁止品判定・審査要件の根拠になります。
実測重量・梱包寸法・申告価額の整備で送料・税金の自動計算精度が向上。
ドメイン/言語/通貨・決済
言語・通貨:サウジでは英語/アラビア語・SAR(サウジリヤル)の選好が強い市場。Shopifyの多言語・多通貨に対応。
決済:国際カードやPayPalに加え、中東で利用されるローカル決済を広げる場合は外部ゲートウェイの導入を検討。
バイヤーに伝えるべきメッセージとチェックアウト文面例
KSA向けは、受取人の本人情報(国民ID/Iqamaまたは商業登記CR番号)やNational Addressの提供が通関通過の鍵になります。さらに、関税・輸入VAT負担(DAP)か事前徴収(DDP)かの明示で、受取拒否・返送リスクを大幅に減らせます。
最低限、購入前に伝えるべきこと
配送条件(DAP or DDP)と税金の負担者
通関に必要な受取人情報(国民ID/CR番号・電話番号・National Address)
輸入規制(食品・化粧品・医薬品・電波機器・バッテリー等の制限)
想定配送日数・遅延要因(保安検査、祝祭日、ランダム検査)
受取拒否/未払い時の扱い(返送・再配送料・再通関費用の帰属)
文面テンプレ(DAP:受取人が税金負担)
日本語(サイト掲示/チェックアウト注意書き)
関税・輸入VATについて:本商品はサウジアラビアへの越境配送(DAP)でお届けします。輸入VAT(15%)および関税等は受取人様のご負担となり、配送業者より別途請求されます。通関には受取人の国民ID(Iqama)または商業登記(CR)番号、National Address、電話番号が必要です。ご提供いただけない場合や税金未払いの場合、配送遅延または返送となることがあります。
英語(サポート用)
This shipment is delivered under DAP terms. Import VAT (15%) and customs duties are payable by the consignee upon import. Saudi customs clearance requires the consignee’s National ID (Iqama) or CR number, National Address, and phone number. Failure to provide the information or to settle taxes may cause delays or return-to-sender.
文面テンプレ(DDP:販売者が税金負担・事前徴収)
日本語
関税・輸入VATの事前徴収:本商品はDDP(関税・輸入VAT販売者負担)でお届けします。チェックアウト時に表示される「関税・輸入税」を商品代金と併せてお支払いください。通関には受取人情報(国民ID/IqamaまたはCR番号、National Address、電話番号)が必要です。税金は当店が代理で納付しますので、受取時の追加支払いはありません。
返品・拒否・不在時の扱い(例)
課税後の返品:未開梱・未使用に限り返金。ただし実費の往復送料・通関手数料・税金(返納不可分)は差引。
受取拒否/長期不在:返送費用・再通関費用は注文者負担。返送不可の場合は破棄となることがあります。
規制・禁止品・表示義務(SFDA、ハラール、アラビア語表示 等)
税務と並んでリスクが高いのが輸入規制です。KSAは健康・安全・宗教上の理由から、許認可・事前登録・アラビア語表示義務が課される分野が少なくありません。
代表的な留意分野
食品・化粧品・医療関連:SFDA(食品・医薬品庁)所管。商業輸入では成分・ラベル・警告表示(アラビア語)や事前登録・認可が必要な場合あり。
ハラール:食肉・ゼラチン・一部化粧品成分等はハラール適合の確認・証明が求められ得ます。
電気・無線機器・電池:適合性評価、型式認証、PSE/CE等に類する基準が要求される場合あり。
嗜好品・宗教的に不適合な品目:アルコール、ポーク関連、アダルト、賭博性のある製品等は原則禁止。
商業輸入とみなされる数量・頻度の出荷は、個人利用の少額通関より厳格な審査・表示要件の対象になります。JETROのガイドや現地通関業者への事前ヒアリングを推奨します。
シナリオ別の対応表(DAP/DDP/KSA登録/Marketplace)
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シナリオ |
概要 |
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Option A:自社EC × DAP |
輸入VAT/関税はバイヤー負担。KSAでのVAT申告は通常不要。チェックアウトで税負担者・必要情報を強調。通関案内メールを自動化。 |
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Option B:自社EC × DDP |
輸入VAT/関税をセラーが事前徴収・納付。IORと通関委託先を確保。KSAでのVAT登録・請求書・記帳が必要になり得る。 |
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Option C:Marketplace活用 |
モールが徴収・通関を代行する設計ならセラー負担軽減。手数料・プロモの自由度と引き換えに税実務をアウトソース。 |
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Option D:ハイブリッド |
高単価・反復購入向けはDDP、自社ECのテスト販売はDAP、量産はMarketplaceなど、商品・顧客に応じて使い分け。 |
意思決定の基準
カゴ落ち抑制・体験重視→DDP。ただし税務・通関の内部コスト増。
検証重視・簡便性→DAP。文面とCX設計で受取拒否の抑制が鍵。
税リスク回避・速度重視→Marketplace。ブランド統制・手数料の影響を吟味。
よくある質問(FAQ):返品・少額輸入・電子請求書・B2B他
Q1. 少額(低額)なら輸入VATや関税は免除されますか?
多くの国で免税枠が議論されますが、KSAは輸入VAT(15%)を広く賦課する運用です。関税はHSコード・申告価額・数量で変動。免税の一般化は期待せず、チェックアウトで費用を予告しましょう。
Q2. 返品時の税金は返ってきますか?
輸入VAT・関税の返還は条件が厳格で、返還不可なケースも多いです。返品ポリシーで差引精算(往復運賃・通関費・不可返還税の控除)を明記してください。
Q3. KSAの電子インボイス(FATOORA)は必要?
KSAの電子インボイス義務は主に居住のVAT登録事業者が対象。非居住でKSA登録が不要な運用(DAP主体など)では適用外が通常。ただしDDPで登録が必要なスキームを採る場合、税務アドバイザーに要確認。
Q4. B2Bに売る場合は逆課税(リバースチャージ)ですか?
役務供給の多くは逆課税が論点になり得ますが、物品は輸入時課税が中心。B2Bでも誰が輸入者かをまず特定し、輸入VATと国内供給の有無で判断します。
Q5. 情報ソースはどこを見れば良い?
Q6. 実務の最初の3ステップは?
① 販売条件の決定(DAPかDDPか、Marketplace併用の可否)
② 商品データ整備(HSコード、原産国、重量・寸法、危険物該当性)
③ 顧客案内の整備(チェックアウト文面、本人情報の取得フロー、返品・拒否時のルール)
今般、Shopifyで日本から海外に物品をECにて販売する越境ECセラー向け:サウジの課税義務と閾値まとめ
標準VAT税率:15%
居住者の登録閾値:義務=SAR 375,000、任意=SAR 187,500
非居住者:国内供給を行う場合は原則最初から登録要。輸入時課税が基本のEC(DAP中心)では登録不要となる設計も可能
関税:品目により0〜25%程度(JETRO参照)。HSコードで要確認
通関実務:受取人ID/CR番号・National Address・電話番号の取得が必須級
結論:安全に売るための実務チェックリスト
サウジアラビア向け越境ECの要点は次の通りです。(1)標準VAT15%、輸入時にVATと関税が課税。(2)誰が輸入者かでセラーの義務が激変。DAPなら通常KSAでの登録は不要だが、バイヤーへの周知が命。DDPは顧客体験が良い反面、VAT登録・通関体制が必要になり得る。(3)HSコード・原産国・重量寸法を整え、Shopify Markets/税設定で国別に最適化。(4)受取人ID/CR番号・National Addressを確実に取得。(5)食品・化粧品・電気製品など規制品はSFDAや表示義務を事前確認。今般、Shopifyで日本から海外に物品をECにて販売する越境ECセラーに対して、現地の間接税の取扱(課税義務や課税義務となる閾値)を詳細に説明してください。また越境ECの際に購入者(バイヤー)に対して伝えるべきメッセージや留意点があれば説明してください。という観点に立てば、まずはインコタームズの選択・顧客周知・商品データの整備から着手し、必要に応じてZATCA公表情報や専門家に照会しつつ運用を段階的に拡張するのが最短ルートです。ルールは改定されるため、最新情報の確認を常に行い、安全かつ高転換なサウジ市場攻略を進めてください。