米国EC物販の連邦・州法人税 完全ガイド
日本企業がアメリカ市場に向けてEC物販を展開する際、最初に直面する大きな壁が税務です。連邦レベルと州レベルで二重に走るアメリカの法人課税は、日本の単層構造と大きく異なり、「どこに、どの税を、いつ申告・納付するのか」が分かりづらくなりがちです。本記事は、アメリカ向けにEC物販をする日本企業の経営者・財務責任者・実務担当者の方が、いまの体制で適切に納税・節税し、将来の拡張にも耐える設計に整えられるよう、最新の制度と実務の要点を体系的に解説します。
米国EC物販の連邦・州法人税 完全ガイド
日本企業がアメリカ市場に向けてEC物販を展開する際、最初に直面する大きな壁が税務です。連邦レベルと州レベルで二重に走るアメリカの法人課税は、日本の単層構造と大きく異なり、「どこに、どの税を、いつ申告・納付するのか」が分かりづらくなりがちです。さらにAmazon FBAや米国内3PLの活用、マーケットプレイス経由の販売などEC特有のオペレーションが、恒久的施設(PE)や州のネクサス(課税関係発生の閾値)に影響し、思わぬ課税やペナルティにつながることもあります。
本記事は、アメリカ向けにEC物販をする日本企業の経営者・財務責任者・実務担当者の方が、いまの体制で適切に納税・節税し、将来の拡張にも耐える設計に整えられるよう、最新の制度と実務の要点を体系的に解説します。特に、日本からアメリカにEC物販を行うにあたり、現地の連邦法人税、州法人税の取扱について記載した記事を書いてくださいというニーズに応えるべく、日米租税条約やPE判定、州ごとの法人税・フランチャイズ税・グロスレシート税(総収入税)の違い、Wayfair判決以降のSales Tax(売上税)との混同を避ける注意点まで、Why/What/Howを網羅します。最終的に、どの販売スキームを選ぶか、どの州に拠点を置くか、どの登録・申告が必須かを自信を持って判断できるようになるはずです。
- 米国法人課税の全体像(連邦+州)
- 連邦法人税の取扱:PE・ECI・申告実務
- 州法人税・フランチャイズ税・総収入税の実務
- Sales Tax(売上税)との違いと連動点
- 販売スキーム別:税務影響と選び方
- 登録・申告・納付の年次カレンダーとチェックリスト
- 国際税務の重要テーマ:移転価格・BEAT・CAMT
- FBA・3PL・返品拠点が与える税務影響
- 拠点州の選定:税率だけに頼らない意思決定軸
- よくある質問(FAQ)
米国法人課税の全体像(連邦+州)
アメリカの法人課税は二層構造です。連邦政府が課す連邦法人税と、各州(場合により市・郡を含む)が課す州法人税・フランチャイズ税・総収入税などに分かれます。連邦と州は別体系・別申告であり、どちらも検討が必要です。
連邦法人税:基本と近年の改正
連邦法人税率は、2017年税制改革(Tax Cuts and Jobs Act)により2018年から一律21%になりました。大企業には、税務ベースとは別に財務諸表利益を基礎に課税する企業向け代替ミニマム税(CAMT、15%)が2023年から導入され、また国外関連者支払いに係る税源浸食対策税(BEAT)も一定の大企業に適用されます。中小規模の日本企業のEC物販では通常、CAMTやBEATの対象外ですが、将来のスケールアップを見据え、グループ連結規模や国外関連支払いの多寡には留意しましょう。制度の概観はJETRO「米国 税制」が参照に有用です。
州レベル:多様な課税(州法人税・フランチャイズ税・総収入税)
州はそれぞれ独自の課税体系・税率・申告頻度・計算方法を持ちます。典型は「州法人所得税」ですが、「フランチャイズ税」(事業継続権に対する課税、しばしば最低税あり)、「グロスレシート税(総収入税)」の州もあります。代表例として、ワシントン州(B&O税)、オハイオ州(CAT)、ネバダ州(Commerce Tax)は総収入ベースで課税します。税率や制度は毎年変わり得るため、最新の一覧はTax Foundationの「State Corporate Income Tax Rates」など一次情報を随時確認してください。
用語の土台:ECI・PE・ネクサス
- ECI(Effectively Connected Income):米国で実質的に接続した所得。連邦法人税の課税対象となり得る所得概念。
- PE(恒久的施設):日米租税条約上、連邦課税の鍵。米国内にPEがなければ、原則として事業所得に連邦法人税は課されません。
- ネクサス(Nexus):州課税の鍵。州内で「事業をしている」と認められる連結点。物理的存在(在庫・人員)に限らず、一定売上超の「経済ネクサス」を採る州もあります。
定義(要旨):恒久的施設(PE)は、事業を行うための一定の場所等を指し、そこに帰属する所得が課税対象となる(参照:JETRO「恒久的施設とは」)。
連邦法人税の取扱:PE・ECI・申告実務
日本からのEC物販が連邦法人税の対象になるかは、「米国内にPEがあるか」「所得がECIに該当するか」で判断します。日米租税条約により、PEを有しない日本法人の事業所得は米国で課税されないのが原則です。一方で、米国内在庫(FBA/3PL)や米国内の従業員・代理人の活動があると、PEリスクが高まります。
PEが成立しやすい・しにくい典型事例
- 成立しやすい事例
- 米国内の倉庫・フルフィルメント拠点を自ら維持管理し、そこから出荷している。
- 米国内の従業員や依存代理人が、通常的に契約締結権限を行使して販売している。
- 修理・設置・アフターサービスを米国内で継続的に行っている。
 
- 成立しにくい(例外適用の余地がある)事例
- 純粋な保管・展示・引渡しのみのための施設(条約の準備的・補助的活動の範囲)。
- 在庫が第三者倉庫で保管され、事業主体の管理支配が限定的かつ活動が補助的。
 
もっとも、Amazon FBAのようなケースでは、在庫の所在や返品処理、価格設定・プロモーションの主導など実態によりPE認定の可能性が高まります。ECI/PEの判断は事実認定次第で結論が動くため、販売設計の初期段階から国際税務専門家にレビューを受けることを推奨します。
PEありの場合の連邦税務フロー
- 申告様式:日本法人はForm 1120-F(U.S. Income Tax Return of a Foreign Corporation)。
- 税率:21%(CAMTやBEATは大企業に限定)。
- ブランチ・プロフィッツ税(Branch Profits Tax):米国子会社へ配当するのと同等の概念で、米国内に残された支店利益に追加課税。日米租税条約で軽減され得ます。
- 推定納税:連邦の予定納税(四半期)対象。過少申告加算税に注意。
PEなしの場合の連邦税務
事業所得は原則、米国で非課税。ただし、米国源泉の利子・配当・使用料等のFDAP所得は30%源泉の対象(条約で軽減・免除可)。条約適用には、支払者へForm W-8BEN-E提出が必要です(参照:JETRO「米国連邦・州税制(法人)」)。
条約適用の実務(W-8BEN-EとForm 8833)
- W-8BEN-E:源泉徴収軽減・免除の事前届。支払前に支払者へ提出。
- Form 8833:条約ベースの主張をIRSへ開示(該当時)。
条約原文・和文は外務省の「日・米租税条約」で確認できます。
州法人税・フランチャイズ税・総収入税の実務
州税は「連邦に課税がない=州も課税なし」ではありません。州は独自の「ネクサス」基準で課税権を主張し、物理的存在がなくても一定売上超で申告義務が生じる「経済ネクサス」を採る州が拡大しています。さらに、連邦法P.L.86-272は「州のネット所得税から一定の免除」を与えますが、保護範囲は狭く、総収入税やフランチャイズ税、Sales Taxには効きません。
ネクサスが発生しやすい状況
- 在庫ネクサス:州内のFBA/3PL倉庫に在庫が存在。
- 人的ネクサス:州内の従業員、依存代理人、常駐の請負営業。
- 経済ネクサス:州への年間売上が一定額(例:10万~50万ドル等)を超過。
- その他:州内での展示会出展の反復、返品拠点・修理拠点の設置など。
P.L. 86-272の保護と限界
州ネット所得税に限り、州外事業者が「有形動産の販売に関する単なる勧誘(solicitation)」だけを州内で行い、受注承認と出荷が州外で完結する場合、課税が免除される可能性があります。注意点は次の通りです。
- ECサイトのインタラクティブ機能(チャットでの価格交渉、返品承認、アフターサポートの実行)があると「勧誘」を超えやすい。
- 総収入税・フランチャイズ税(純所得以外を課税標準とするもの)には保護が及ばない。
- 在庫の州内存在は、保護適用を難しくします。
代表的な州の特徴(抜粋)
- カリフォルニア州(CA):法人税・フランチャイズ税。最低税(固定額)あり。市場基準の配賦、コンプライアンスは厳格。
- ニューヨーク州(NY):法人税・固定額最低税あり。ニューヨーク市独自の課税も考慮。
- テキサス州(TX):州法人所得税はないが、「マージン税(フランチャイズ税)」あり(総収入から一定控除後の課税)。
- ワシントン州(WA):B&O税(総収入税)。利益が出ていなくても総収入に課税。
- オハイオ州(OH):CAT(総収入税)。閾値超で申告義務。
- ネバダ州(NV):Commerce Tax(総収入税)。
- デラウェア州(DE):州法人所得税に加え、デラウェア・フランチャイズ税(会社法ベースの年税)。
最新税率・ルールは各州税務当局またはTax Foundation等の一次情報を確認(参照リンク:JETRO 米国 税制に外部資料への入口があります)。
アポーションメント(所得按分)
多州にまたがる場合、どの州にどれだけの所得を割り当てるか(配賦)のルールが重要です。現在は「売上のみ(Single Sales Factor)」が主流で、サービスは市場基準(Market-Based Sourcing)が多い一方、有形商品の「スロー・バック」規定を持つ州もあります。ECでは配送先ベースの売上配賦が中心となることが多く、返品や無償提供の扱いも州ごとに異なります。
Sales Tax(売上税)との違いと連動点
州のSales Taxは「消費課税」であり、法人所得課税とは別物です。2018年のWayfair判決以降、店舗がなくても一定売上超でSales Taxの登録・徴収・納付義務が生じる「経済ネクサス」が全米で拡大しました。Sales Taxは条約の対象外で、PEの有無にも左右されません。
混同しないための要点
- 連邦法人税:PE/ECIで判定。条約で非課税・軽減の可能性あり。
- 州法人税等:ネクサス・配賦で判定。P.L.86-272の限定的保護あり。
- Sales Tax:Wayfair後の経済ネクサスで判定。条約・P.L.86-272の保護なし。
EC実務では、FBA在庫の州内存在が「州法人税」と「Sales Tax」の双方でネクサスを引き起こすことが多く、登録・申告の二重管理が必要になります(参照:Wayfair以降の留意点は会計事務所各解説や州税サイト、例:越境EC事業者向け:会計税務の基礎知識)。
販売スキーム別:税務影響と選び方
日本企業の米国EC物販は大きく3つのスキームに分けられます。各スキームで、連邦・州税務、コンプライアンス、将来の資金回収やExitに与える影響が異なります。
| スキーム | 概要・向く条件 | 連邦税務(典型) | 州税務(典型) | 主なメリット/デメリット | 
|---|---|---|---|---|
| Option A:日本本社から直接販売 | 在庫・人員は日本中心。米国内はマーケ/返品程度。市場テストやニッチ商材。 | PEなしなら連邦法人税なし。FDAPは源泉+条約軽減。PE化なら1120-F+BPT検討。 | 在庫や経済ネクサスで州法人税・総収入税・Sales Taxの登録義務が生じ得る。 | 設立コスト低・機動性高。PE/ネクサスの線引きが難しく、拡大時の再設計コスト。 | 
| Option B:米国C-Corp子会社(現法) | 在庫・人員・返品拠点を米国内に整備し成長投資。B2C拡大・資金調達志向。 | 連邦21%(中小にCAMT/BEAT通常非該当)。配当は日本側で外国税額控除等を検討。 | 拠点州+販売州へ申告。Sales Taxは州ごと登録。DEフランチャイズ税等も考慮。 | ガバナンス/採用/取引が容易。二重層の申告負担。配当課税や移転価格文書の整備必要。 | 
| Option C:米国LLC支店(課税上ブランチ) | 柔軟な損益通過・パススルーやチェック・ザ・ボックス選択。初期赤字活用志向。 | ブランチ課税(1120-F等)+ブランチ・プロフィッツ税の可能性と条約軽減の検討。 | 州はパススルー/ブランチの扱いに差。UBT等のローカル課税が追加される場合あり。 | 初期損失を親側で活用しやすい設計余地。条約・各州ルールの整合と実務が難度高。 | 
選定の判断軸
- 物流オペレーション:在庫・返品・修理の所在(PE/ネクサスに直結)。
- 資金回収動線:配当か、ロイヤルティ/サービス料か(源泉/条約/移転価格)。
- 成長戦略:資金調達・採用・店舗展開の可能性(現法の利点)。
- コンプラ許容度:州別多重申告/最低税/総収入税への対応能力。
登録・申告・納付の年次カレンダーとチェックリスト
EC物販の税務実務は「登録→徴収/会計→申告→納付→保存」の反復です。連邦と州で期限が異なり、四半期予定納税や月次Sales Tax申告が重なるため、年次カレンダーの整備が不可欠です。
連邦(典型)
- EIN取得(IRS)。
- 1120(米国C-Corp)または1120-F(外国法人)提出。延長はForm 7004で申請可。
- 四半期予定納税(通常4/15、6/15、9/15、12/15基準)。
- 条約適用時のW-8BEN-E管理、必要に応じForm 8833提出。
州(典型)
- セクレタリー・オブ・ステートへの外商認可(外国会社の資格取得)、年次報告。
- 州法人税/フランチャイズ税/総収入税の登録・申告・納付。
- Sales Taxの登録(経済ネクサス・在庫ネクサス)、申告(州により月次/四半期/年次)。
- 固定額最低税(例:CA固定ドル最低税等)の予算化。
ドキュメント整備(監査・税務調査対応)
- 移転価格文書(アームズレングス:親子間の仕入/役務/無形資産使用)。
- ネクサス分析書(在庫・人員・売上閾値の証拠)。
- 州別売上・配送先・返品データ、マーケットプレイス報告。
- 条約適用の実体要件(実質的所有者・受益者)の証憑。
国際税務の重要テーマ:移転価格・BEAT・CAMT
米国子会社を設ける、またはブランチ課税となる場合、親子間取引は移転価格税制の対象です。仕入価格・ロイヤルティ・サービス料の設定は、販売粗利・州配賦・通関評価(関税)にも波及するため、統合設計が理想です。
移転価格(Section 482)
- ベンチマーク:再販売価格法(RPM)やCUPなど、ビジネスに適合する方法を選択。
- 文書化:手法・可比性分析・財務ベースの整合をレポート化。調査耐性を担保。
- 在庫回転・返品率・FBA手数料などEC特有KPIを反映。
BEAT・CAMTの射程(大企業向け)
- BEAT:国外関連者への支払いが多い大企業に追加税。中堅以下は通常非該当。
- CAMT:AFSI(調整後財務諸表利益)ベースの15%ミニマム税。連結規模10億ドル超が対象(外国グループ要件あり)。
概説・一次情報はJETRO米国 税制の関連リンク(IRS)を参照。
FBA・3PL・返品拠点が与える税務影響
EC物販で最も誤解が多いのが、在庫・物流が税務に与える影響です。連邦・州ともに重要な意味を持ちます。
在庫の所在=ネクサス・PEリスク
- 州:在庫が置かれた州で法人税(または総収入税)とSales Taxの登録義務が発生しやすい。
- 連邦:在庫・フルフィルメント運用の実態次第でPE判断に影響。返品/修理の国内処理が継続的ならリスク増。
マーケットプレイスの論点
- Sales Taxは「マーケットプレイス・ファシリテーター」ルールでプラットフォーム側が徴収・納付する州が多数。ただし委ねっぱなしにせず、自己販売分や登録義務の有無を継続確認。
- 法人税(州)や総収入税の義務は、マーケットプレイスの代理納付とは別問題。
設計Tips
- 最初は在庫州を限定し、ネクサスの発生州数を管理(Compliance負荷を段階的に拡大)。
- 返品・修理は外部委託含め、場所・頻度・業務範囲をドキュメント化。
- FBAの自動再配置(複数州移動)に備え、州別在庫日数レポートを保存。
拠点州の選定:税率だけに頼らない意思決定軸
「法人税率が低い州」だけで決めると、総収入税・最低税・ローカル税・コンプライアンスの難易度で逆にコスト高になることがあります。以下の観点で総合判断を。
- 課税体系:法人所得税・フランチャイズ税・総収入税の有無と税率。
- 最低税:固定ドルの最低税(例:CA等)。黒字/赤字に関わらず負担。
- 配賦・市場基準:EC販売で有利/不利な配賦方式。
- Sales Tax運用:登録・申告の頻度・自治体レイヤーの複雑さ。
- 事業コスト:物流・人件費・法令(消費者保護、プライバシー等)。
- 優遇制度:雇用・投資クレジット、越境EC支援の有無。
最新の州税変更や税率は、Tax Foundation、各州税務局、JETRO米国 税制掲載の外部リンクで必ず現況確認を。
よくある質問(FAQ)
Q1. 日本から直販で、米国内にオフィスも社員もいなければ連邦法人税は不要ですか?
A. 原則は「米国内にPEがなければ事業所得は非課税」です。ただし、在庫・返品拠点・依存代理人など実態によりPE認定のリスクがあり、FDAP所得の源泉課税など別枠の課税もあります。事実関係の精査が必須です。
Q2. 州法人税は、Sales Taxを払っていれば不要ですか?
A. 別制度です。Sales Taxは消費税、州法人税は所得や総収入等に課税。両方が必要なケースが多くあります。
Q3. P.L.86-272があれば、州法人税は免除されますか?
A. 条件を満たせば「州ネット所得税」のみ保護。総収入税・フランチャイズ税・Sales Taxには効果がありません。ECの高度なサイト機能や在庫州内存在は保護を失わせやすい点に注意。
Q4. FBA在庫が複数州に散る場合、すべての州で申告が必要?
A. 在庫ネクサスにより登録・申告義務が複数州で生じ得ます。各州のガイドラインと在庫の実在記録を突合してください。
Q5. 連邦の申告書類は何を提出しますか?
A. 米国子会社はForm 1120、日本法人のブランチ/PEはForm 1120-Fが中心。条約主張があればForm 8833、源泉軽減にはW-8BEN-Eが関係します。
Q6. ブランチ・プロフィッツ税(BPT)は必ずかかりますか?
A. 連邦税法上、外国法人の米国支店利益に追加課税され得ます。日米租税条約により軽減・調整される場合があります。適用可否・税率は条約要件と実態で判断。
Q7. 州の税率が低い州に法人を作れば節税できますか?
A. 本店州以外でも販売先・在庫州にネクサスがあれば、その州で課税されます。拠点州の税率だけで節税は完結しません。
Q8. Sales Taxはマーケットプレイスが代行してくれるので、何もしなくて良い?
A. 多くの州でマーケットプレイス側が徴収・納付する制度がありますが、自己出荷分の義務、過去分の登録漏れ、リセール証明や免税販売の管理など、委ね切れない実務が残ります。
Q9. 移転価格文書は中小でも必要?
A. 規模を問わず親子間取引があれば推奨です。税務調査の重点分野であり、文書化がないと追徴・ペナルティのリスクが上がります。
Q10. 制度変更の最新情報はどこを見る?
A. 連邦はIRS、州は各州税務当局。概観はJETRO米国 税制、条約は外務省(日・米租税条約)を起点に一次情報へ当たってください。
結論(まとめ)
日本からアメリカにEC物販を行うにあたり、現地の連邦法人税、州法人税の取扱は「PE/ECI(連邦)」と「ネクサス/配賦(州)」の二本柱を押さえ、Sales Taxとは厳密に切り分けて運用することが肝要です。連邦は原則21%で、PEがなければ事業所得は非課税になり得ますが、在庫・代理人・返品拠点などECならではの実態がPEリスクを高めます。州は在庫・人的・経済ネクサスで課税権を主張し、法人所得税のほかフランチャイズ税や総収入税もあるため、P.L.86-272の保護に過信は禁物です。販売スキーム(直販/現法/ブランチ)と物流設計(FBA/3PL/返品)を一体で設計し、条約手続(W-8BEN-E、Form 8833)、移転価格文書、州ごとの登録・申告カレンダーを初期から整えることで、余計な追徴・ペナルティを回避できます。最新情報はIRS・各州税務局・JETRO等の一次情報で確認し、拡大の節目ごとに国際税務の専門家と設計をアップデートしてください。本ガイドが、皆さまの米国EC事業を「安心して拡大できる」税務基盤づくりの一助となれば幸いです。
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